It's my life byドラゴンスネィク団

まだまだ酷暑が続きそうです。

episode 15 西田洋介

公園の裏口の柵に腰掛けながら俺は加賀谷に聞いた。

「そういえばさ、お前、西田洋介って知ってる?」

すると加賀谷は

「西田洋介?んー聞いたことがあるような…」

「清彦と洋介と同じ幼稚園だったんだろ?」

加賀谷は思い出したように

「あー、西田ね、居た居た。それが何?」

俺は「洋介、同じ小学校なんだよね。んで加賀谷の名前を聞いてたから呼んだんだよ。」

すると加賀谷は「そうなんだ。んで、何の用?」

 

「清彦ってさ、俺も小さい頃から知ってるんだよね。アイツの家と俺の親の店がはす向かいでさ、良く遊んでたんだわ。もちろんお互いの親も知ってる」

「んで今日、お前を読んだのは聞きたい事があるんだよね。」

 

「聞きたい事?何を聞きたいんだよ。」

少しイラつきを見せる加賀谷。

 

「清彦ってさ、お前らの仲間なんだろ?なんで笹山にいじめられてるの?」

 

加賀谷は驚いたように

「清彦が笹山にいじめられてる?そんな事無いよ、仲間だから。」

俺は「じゃあお前は知らないのか。清彦が笹山にカツアゲされてるって。」

加賀谷がとぼけてる様には見えなかった。

本当に知らないんだと。

「わかった、急に呼び出して悪かったね。多分、お前とは二度とは会わないと思うけど。ありがとうね。」

そう言って帰ろうとした時に加賀谷は言った。

「どういう事だよ、清彦がカツアゲされてるって。本当の話なのかよ。」

振り向きざまに

「俺はそう聞いただけ。んで確かめようと思って来ただけだよ。名前が分かるのがお前だけだったから。俺の話は気にすんなよ。違った方法で確かめるから。じゃあね。」

そうして俺は家に帰った。

どうすれば確かめられて、清彦を助けられるか。

 

その日の夜に、また晩飯を食いに親の店に向かう。

食べながらも考えてた。

すると清彦が店に来た。

「外から見たら流次が見えたから、少し時間良い?」

「メシ食ったら清彦の家に行くよ。待ってて」

 

そして清彦の家に向かった。

今度はいきなり裏口に回り清彦を呼んだ。

「今日、加賀谷に会って来たよ。」

 

「知ってる加賀谷から電話来た。」

 

「ヤバかった?いきなり加賀谷と接触したの」

 

「加賀谷は何も知らないから、聞いても分かんないよ。笹山はみんなの居ないところで言ってくるから」と俯き加減で清彦は言う。

 

すると清彦は唐突に「流次さ、笹山からカツアゲしてよ。そしたら絶対に俺のトコに来るから。お金にシルシを付けておくから、そうすれば笹山が何を言っても俺からカツアゲしたのが分かるじゃん。」

 

「ん〜カツアゲねぇ…笹山の家も電話番号も知らないし連絡の付けようが無いから難しくね?」

すると清彦は「時間と場所と金額決めてさ、俺が伝えるよ。渡す場所も。」

 

「そんなんで食い付いてくるかなぁ。まぁ清彦に任せるよ。それで清彦が助かるなら何でも良いから。作戦決まったら、また店に来て。」

そう言い俺は帰った。

 

しかし浅はかな小学生の朝知恵は見事に粉砕される。

そして恐怖のオヤジ伝説が始まるのであった。

 

 

 

 

 

 

 

日本一心

アレから8年もの時が過ぎた。

当日、俺は広島市内で営業の仕事をしていた。

ラジオから流れる地震速報。

途中、番組を中断しての地震情報に切り替わった。

東北と東京で大地震

何気なく聴いていたがアナウンサーの異様な雰囲気を感じ尋常では無いと思った。

会社の近くに居たので、とりあえず会社に戻った。

事務の人たちがテレビに釘付けになっていた。

同じ日本で起こっている現象と理解するのに時間が掛かった。

押し寄せる大波。逃げ惑う走行車両。

画面越しにも事の重大さを感じた。

東京のツレに連絡を試みたが携帯は一切繋がらない。実母や兄弟は関東に居る。

普段は連絡なんて取り合う間柄では無いが、流石に連絡を試みた。しかし一切繋がらない。

時が経つにつれ被害の状況がわかってきた。

正に天災。

その後の仕事は放棄して、とりあえずは身内の安否だけは知りたかった。

携帯が繋がらないので公衆電話に人々が殺到してるとニュースで流れて居たので固定電話に掛けてみた。

案の定、固定電話は繋がった。

幸いにも身内もツレも無事だった。

自宅に戻りテレビから流れる映像を見る度に本当に日本で起きている事なのかと思っていた。

阪神淡路大震災より被害が甚大なのは見て取れた。

人は何故に生まれ死んで行くのか

生きたいのに生きれない方もいれば

死にたくないのに死んでしまう。

自ら死を選択する方。

儘にならないのが人生なのは当たり前だが愛する人たちを失うのは刹那い。

それが生き別れでも死別でも。

「はるかの向日葵」でも感じたが、やはり日常の平穏なことに感謝しなければならない。

感情に任せて行動して、二度と会えなくなると思うと少しでも悔いなくするには笑顔と挨拶は大事だと尚更思う。

2万2千余りの魂が安らかに眠って頂けたらと切に願う。

 

先月、本宅に帰った時に流れで俺が簡単な料理をする事になった。

食材を用意して道具を準備して、コンロの火をつけようとしたら何度やっても火がつかない。

おかしいなと思っていたら彼女が横から

「ガスの元栓が開いてないよ」と。

一瞬、何で?と思ったがスグに理解した。

言葉には出さなかったが。

彼女は阪神淡路大震災を体験している。

故に普段からの備えが大事だと改めて教えてもらった。

 

毎日を過ごせる事に感謝しよう

 

 

episode 14 西田洋介

明くる日、俺は自分から洋介のトコに行った。

「お前さ、清彦ともう1人坂八に友達いるって言ってたじゃん?誰だっけ?」

洋介は「加賀谷だよ、清彦とは小学校に入っても遊んでたけど、加賀谷とはあまり遊んでなかったから俺のこと覚えて無いかもしんない。」

 

「加賀谷ね、ありがと。」

 

「何だよ、また隠し事かよ?」洋介は言った。

 

「いや特に隠し事じゃあ無いよ。気にすんなよ。あとまだ誰にも言うなよ、俺も転校するかもしんない。夏休み中に引っ越す事になったんだってさ。」

「マジで?ドコに引っ越すの?」と驚いた様子の洋介。

「知らん、聞いてない(笑)でも店があるからそんなに遠くには行かないとは思う。だから、誰にも言うなよ。」念を押して洋介と別れた。

 

俺は清彦の件をどう解決するか考えた。

直接、笹山に言ったとしても、その後に清彦が更なるいじめにあったら意味が無い。

清彦が本当に被害に合ってるのかさえ分からない。

何から始めれば良いのか。

とにかく事実を確かめようと。

俺は学校から帰って1人で坂八小に向かった。

頼みの綱は顔も知らない「加賀谷」だけだと。

ちゃんと話してくれるかはわからないが、笹山に接触する前に話をしてみようと。

 

先週、笹山とケンカした坂八小の横の公園の入り口でずっと立っていた。

30人くらい居た野次馬の誰かしら通ると思ったから。

けど清彦とは会ってはいけない。

しばらくしたら俺の顔を見て「あっ!」と言う奴が居た。

俺はすかさず近付いて公園の中に連れて行った。

肩を抱きながら「お前、土曜にココに居たよな?俺の事分かるだろ?」とカマを掛けた。

すると「うん」と答えた。

「ちょっと頼みたいんだけどさ、加賀谷って奴をココに呼んできて。もちろん1人で来させてくれよ。適当な事言ってさ。」

「加賀谷?笹山じゃないの?」と聞かれた。

俺は「あぁ加賀谷。加賀谷だけ連れてきて。他の奴に俺が来てること言っても良いけど連れてくるのは加賀谷だけな。」

「わかった、連れてくる。」 ちょっとビビってる様に見えたから俺は追い打ちを掛けた。

「悪いね、一応ランドセル置いてってくれる?万が一、テキトーな事されたらお前だけをずっと狙うから。」

 

ランドセルを置いて、また坂八小に戻って加賀谷を呼びに行ってくれた。

10分くらいして、その子と加賀谷らしい男子がが公園に2人できた。

俺より少し背が低かったが体型は似ていた。

少し険しい表情で向かいあった。

「ありがとうね、もう君は帰って良いよ。学校に戻らずに家に帰れよ。」

そう言いながらランドセルを渡した。

 

そして俺は加賀谷に言った。

「お前が加賀谷?俺は秋咲。土曜に居たよな?」

すると加賀谷は

「居たけど、何の用だよ?何で俺の名前知ってんだよ?笹山は負けたけど俺は負けてねぇからな。」

少し興奮してる様に見えた。

「お前らの中で1番強い笹山は俺に負けたよな?お前らのルールじゃ弱い奴は舎弟になるんだろ?なのにお前にケンカ売る理由なんか有るわけないだろ。弱い者イジメは趣味じゃ無いから。」軽く睨みながら加賀谷に言った。

「じゃあ、俺に何の用だよ。」と加賀谷。

俺は顔を緩めながら

「そんなに構えるなよ。ちょっと確かめたい事があって話を聞きに来たんだよ。」

「ココじゃ人目に付くから裏に行こうぜ。」

加賀谷を公園の裏に連れて行った。

 

 

episode 13 西田洋介

何日か経って晩ご飯を食べに両親の経営する店に行った。

自営だったので晩ご飯は、各自店に食べに行くシステムだった。

要は夜は子供たちだけ。

よくある一般的な家族団欒の晩ご飯は皆無の家庭だった。

店に行って、自分の食べたい食材を使い自分で作って食べる。そんな感じだった。

そんな時、母親が俺に言った。

「さっき清彦が来て、家に来て欲しいって言ってたよ。なんかあったの?」

「清彦も久しぶりに会ったけど変わらないねぇ」と。

「特に何も無いよ、なんだろ?メシ食ったら清彦のトコに寄ってから帰るわ」

晩ご飯を食べ終え店を出る。

信号を渡って目と鼻の先に清彦の家はある。

お店に入り、「こんばんわ〜清彦居る?」

すると昔から変わらぬおばさんが「あら、流次、久しぶりだねぇ、随分と背が伸びたね〜。清彦は部屋に居るから裏から入って行って」

「はーい、お邪魔しまーす」と言い裏に回り勝手口から家に入って「清彦ーっ俺だよ、流次ーっ」何回か呼ぶうちに清彦が出てきた。

 

俺は「アイツ大丈夫だった?笹山だっけ?」

清彦は「特にケガはしてなかったみたいだよ、ただ初めてケンカに負けて落ち込んでたよ。」

「えっ?そうなの?あんなに集まってたからケンカ慣れしてるとは思ったんだけどね。まぁ仕方ないよ。たまたま俺が勝っただけだから。」

「んで用事って何?」

すると清彦は「ココじゃ話せないから外に行こうよ。坂の上にコンビニあるからさ。」

と神妙な面持ちで言った。

「あぁ、じゃあ行こうか」と2人でコンビニに向かい歩き始めた。

歩きながら清彦に「そういえばさ、洋介って知ってる?」と尋ねた。

「洋介って西田洋介?知ってるよ、小さい頃は良く遊んでた。流次、知ってるの?」

俺は「うん、同じ学校。今回、ケンカに連れて行かなかったからブーブー言われた(笑)」

「洋介が清彦と友達って言ってたからさ、奇妙な縁だなぁと思って。」

そしてコンビニに着いた。

清彦は戸惑いながら話始めた。

「実はさ、笹山って坂八で1番強くて威張ってたんだよ。小五くらいからずっといじめられててさ。」俺は驚きながら聞き返した。

「えっ?仲間じゃないの?いじめられてたの?」清彦は小さく頷いた。

「ケンカ強くて大きいから、みんなビビってて。俺もだけど…でもこの前.流次に負けてからみんなの見方が変わって来たのはあるよ」

「うん、で俺にどうしろって?」

清彦は「俺、毎月カツアゲされててさ、来週までにお金を渡さないと、またいじめられるんだ」

俺はさらに驚いて「えっ?お金?仲間じゃないの?友達じゃないの?どういう事?」

「簡単に言ったら舎弟かな。坂八はそんな感じ」と清彦は小声で言った。

「じゃあ、俺が笹山に言って、それをやめさせれば良いの?」清彦は頷いた。

「わかったよ、ちょっと作戦考えるからさ。

清彦を疑う訳じゃ無いけど、その話が本当かどうかも確かめたいし。なんだかんだ言い訳して1週間くらいお金渡すのを延ばして。その間に考えるから。」

そう言うと清彦は「久しぶりに会ったのにゴメンね。笹山が負けると思ってなかったし、こんな話を出来る相手も居なかったから…」

「作戦決まったら、また清彦の家に行くよ。大丈夫だから。んじゃ帰るね。」

清彦とコンビニで別れた。

 

家に向かい歩いてると母親が信号で待っていた。「何かあったの?大丈夫?」と。

「あぁ何にも無い大丈夫だよ。もう帰るから」

すると母親は「夏休みの間に引っ越す事になったからね。」

「えっ?‼︎そんな大事な話を今?転校する感じ?」と聞いたら先生との話し合いで決まると言われた。先ずは清彦の件をどうするかで頭がいっぱいだった。

 

 

 

episode 12 西田洋介

週が明けて学校に行くと英二が声を掛けてきた。

「流次、ケンカどうだったの?大丈夫?」

俺は「とりあえず勝ったよ、んで今後も英二には何もしないって約束もさせた。だから笹山に何かされたらスグに教えてな。」

すると英二は「多分、大丈夫だと思う。二学期の終わりにはオランダに行くハズだから。」

「そうだったね、また日本から居なくなるんだよな…日本に居る間は楽しく行こう」と言うのが精一杯だった。

すると嗅覚が鋭いのか、何なのか分からないが洋介が近寄って来た。

「流次、何を隠してんだよ?」と唐突に迫って来た。

「別に隠してる訳じゃ無いよ、知りたい?」

とニヤケながら俺は洋介に言った。

洋介は「なんだよ、言えよ。」

俺は「どうか教えてくだちゃいって言ったら教えてやるよ」と更にニヤケて言った。

「あっ?じゃあいいよ、聞かねー」と洋介。

「あっそ、じゃあ言わない(笑)」と俺。

シビレを切らしたのか洋介は「教えてくだちゃい」と俺を睨みながら言った。

俺は「あっ?教えてもらう態度じゃねぇだろ?」と洋介を睨み返すと同時に右肩が上がりかけた。

すると横から英二が「終わったんだから教えてもいいんじゃない?」と俺をなだめた。

「大した事じゃねえよ、坂八の奴に呼び出されて、返り討ちにしただけだよ。」

すると洋介は「坂八?坂八って星岡清彦って居なかった?」

俺は「清彦の事、知ってんの?何で?」

洋介は「清彦は幼稚園の時に一緒で良くアイツの店に食べに行ってたんだよ、流次の親の店の反対側だよ」

「あと加賀谷ってのも坂八だと思う。よく3人で遊んでたから。」

「ふーん、そうなんだ。清彦は俺も小さい時から知ってたよ。加賀谷ってのは分かんないけど居たのかな?」と英二に顔を向けた。

英二は「んー笹山以外は塾が一緒じゃないから分かんないや」と答えた。

「で、どうだったの?」と洋介が聞いてきた。

俺は半分呆れた表情で「話聞いてた?返り討ちにしたって言ったじゃん。笹山って奴と1対1で勝負したよ。周りに野次馬みたいなのが30人くらいと中学生も居たけどね。」

すると洋介は「何で俺も連れてってくれなかったんだよ!水臭いじゃんか。ガクも呼べば絶対に来たよ」と詰め寄ってきた。

「相手が1人だったからだよ。ゾロゾロみんなで行ったってしょうがないじゃん。ケンカ売られたのは俺なんだし。」

「次にこんな話があったら絶対に声掛けてくれよな!」と鼻息の荒い洋介。

「お前、ケンカ弱いじゃん、向いてないよケンカ。だから次にこういう話があってもお前にだけは内緒にする」とニヤけて言った。

タイミング良く授業のチャイムが鳴った。

「じゃあな」と洋介から離れ英二と教室に向かった。

実際問題、洋介には持病がある。

だから本意気の争い事に巻き込むのは、お袋さんに申し訳無いと思っていたから敢えて突き放した。

成長と共に持病の発作は収まっていたが…

 

それから暫くして俺の生活も変わる事になった。

激変すると同時にパンドラの箱を開ける事になる。

 

 

joker

確かjokerという名前だったと思う。

生まれて初めて吸ったタバコ。 

小学校5年生くらいだった。

4つ離れた兄貴と一緒に風呂に入っていた時だった。

兄貴が「流次、タバコ吸う?」

俺は「タバコ?そんなん親父にバレたらぶっ飛ばされるじゃん」

すると兄貴は「だから、風呂に入ってる今吸えばバレないだろ?」

とても陳腐な発想な兄弟。

そう言って兄貴はタバコを取りに行った。

洋モクの細長く茶色のタバコ。

当時はライターが珍しく、マッチが全盛の頃だった。

兄貴は「このjokerは外国のタバコでさ、チョコの味がするんだぜ、風呂で吸えば湯気とかでバレないだろ」そう言って兄貴は2本jokerを風呂場に持ってきた。

俺は単純に「チョコの味がするタバコなんてあるんだ、駄菓子屋で売ってるタバコ型チョコの本物なんだね」正にアホ兄弟。

タバコを風呂に持ち込んだのは良いが、大きな盲点があった。

風呂の湿気でマッチの火がつかない。

そこでまた兄貴と考えた。

すると兄貴は「とりあえず、脱衣所でタバコに火を付けてすぐに風呂に戻ろう。そんで吸えばバレないだろ」

俺も好奇心旺盛な方だったから「うん、それでやってみよ」と答えた。 

そして兄貴は俺に脱衣所で火をつけて来いと言ってきた。迅速にと。

言われた通り、俺はjokerに火を付けて風呂場に戻った。

またまた陳腐な発想の兄弟はタバコの吸い方を理解してなかった。火をつけると同時に息を吸い込みタバコに火をつける。

親父の見様見真似だった。脱衣所で火をつけて、ソッコーで風呂場に戻る。

何度か挑戦して、やっとjokerに火がついた。

タバコの吸い方さえ知らない兄弟は試行錯誤を重ね、ようやくタバコの吸い方にたどり着いた。

すると兄貴は「どうだ、流次、チョコの味しない?」俺はイマイチわからなかったが兄貴と一緒に背伸びしてる事に楽しみを感じていた。脱衣所で火をつけても風呂に入ったら湿気でタバコの火はすぐに消えてしまう。それでもスリルと背徳感から楽しく感じていた。

結果的に親にはバレずに済んだ。

懐かしいアホな思い出。

 

コンビニで買い物をして、弁当の加温待ちの間にふと見慣れないタバコが目に入った。

メビウスという銘柄。確か昔からあったマイルドセブンが、ニコチン依存を助長する恐れがある名称として「マイルド」というワードを使えなくなったからメビウスになったと思う。

そのメビウスの種類が豊富でやけに多いと見ていたらタバコに味が付いていた。

イチゴ味とかメロン味とか、その類。

店員さんと話してる時に、昔jokerというのがありましたねと話題になった。

jokerというワードで忘れていた記憶が蘇った。

仲が良かった頃の兄貴との思い出だった。

 

episode 11 西田洋介

呼び出された場所に着いた俺と英二。

てっきり1対1のケンカだと思っていたがアウェーに行く事の危険を知る事になった。

パッと目に付いただけで30人は居た。

みんな手には金属バットや木刀、何故かエアガンを持ってる奴も居た。

俺は衝撃を受けた。

まるでドラマのようだと。

小学生だが、皆が道具を手にして待ち構えている様子はカルチャーショックだった。

中には学ランを着た中学生が2人居た。

すると中学生が俺に近づいてきた。

「お前ら2人で来たの?根性あるな」と

笑った。

「笹山は中学に入ったらアタマ張る男だから、まぁ頑張れよ(笑)」と言い放ち去って行った。

 

俺は英二に言った。

「笹山っていうの?どいつ?」

英二は「うん、笹山裕一。真ん中にいる太った奴だよ」

「そっか、もう英二は帰って良いよ、後は大丈夫だから」と俺は言った。

そうして英二は帰って行った。

すると周りの奴らが

「お前、仲間帰らせて1人かよ!なめんじゃねぇよ!」と騒ぎ立てた。

よく見ると公園の奥には女子も10人くらい居た。

すると奥から1人近づいてきて

「もしかしたら流次?俺分かる?」

俺は相手を見ながら記憶を呼び戻した。

「ん?清彦?」

「久しぶりだね!でも今日はケンカだから話はまた今度だね」と。

清彦は自営業の俺の親の店のはす向かいの和食屋の息子。

保育園くらいの時はしょっちゅう遊んでいた。

偶然だが清彦と洋介は同じ保育園だったらしい。

笹山が近づいてきた。

「俺が笹山、お前が志田一小で1番強いんだろ?勝負しようぜ」

俺は「1番かどうかは知らんけど、売られたケンカは買うよ。けど一つだけ約束してくれ」

笹山は「何?」

「今回のケンカで勝っても負けても英二は関係ないから、英二には余計な事しないでくれよ」

俺は笹山を睨みつけながら言った。

笹山は「わかった、それも筋が違うから英二には何もしない」

俺は「それだけは頼むよ。で、誰が俺とケンカすんの?全員?それともお前?」

笹山は「俺とタイマンだよ、周りの奴らは見てるだけだから」

「そっか、じゃあ始めるか」と言った瞬間に笹山の◯◯◯目掛けて右のアッパー気味の一発をくらわせた。

もがき苦しみながら倒れこむ笹山。

一瞬で黙った野次馬たち。

倒れ込んだ笹山に馬乗りになり殴り続けた。

「まだやるか?」との問いに笹山は首を横に振った。

「じゃあ俺の勝ちでいいか?それなら帰るぞ」

笹山は小さく頷いた。

周りの奴らが笹山に駆け寄り声を掛けるが笹山は動けなかった。

帰り際に「清彦!またな」と別れを告げ俺は帰った。

 

しかし、笹山や清彦との長い付き合いが、この時から始まる事は誰も知らなかった。

 

俺には4つ離れた兄貴がいる。

実はケンカに行く前に兄貴に聞いていた。

「自分より背の高い奴やガタイのいい奴とケンカする時、どうすれば良いん?」

兄貴は「最初に◯◯◯に一発入れたら大抵のやつは動けなくなる。あまり思い切り入れると死んじゃうからジャブより、ちょっと強めかな」

役に立つ助言だった。

 

因みに◯◯◯とは金的ではありません。

そんな卑怯なケンカはしてません。