episode 13 西田洋介
何日か経って晩ご飯を食べに両親の経営する店に行った。
自営だったので晩ご飯は、各自店に食べに行くシステムだった。
要は夜は子供たちだけ。
よくある一般的な家族団欒の晩ご飯は皆無の家庭だった。
店に行って、自分の食べたい食材を使い自分で作って食べる。そんな感じだった。
そんな時、母親が俺に言った。
「さっき清彦が来て、家に来て欲しいって言ってたよ。なんかあったの?」
「清彦も久しぶりに会ったけど変わらないねぇ」と。
「特に何も無いよ、なんだろ?メシ食ったら清彦のトコに寄ってから帰るわ」
晩ご飯を食べ終え店を出る。
信号を渡って目と鼻の先に清彦の家はある。
お店に入り、「こんばんわ〜清彦居る?」
すると昔から変わらぬおばさんが「あら、流次、久しぶりだねぇ、随分と背が伸びたね〜。清彦は部屋に居るから裏から入って行って」
「はーい、お邪魔しまーす」と言い裏に回り勝手口から家に入って「清彦ーっ俺だよ、流次ーっ」何回か呼ぶうちに清彦が出てきた。
俺は「アイツ大丈夫だった?笹山だっけ?」
清彦は「特にケガはしてなかったみたいだよ、ただ初めてケンカに負けて落ち込んでたよ。」
「えっ?そうなの?あんなに集まってたからケンカ慣れしてるとは思ったんだけどね。まぁ仕方ないよ。たまたま俺が勝っただけだから。」
「んで用事って何?」
すると清彦は「ココじゃ話せないから外に行こうよ。坂の上にコンビニあるからさ。」
と神妙な面持ちで言った。
「あぁ、じゃあ行こうか」と2人でコンビニに向かい歩き始めた。
歩きながら清彦に「そういえばさ、洋介って知ってる?」と尋ねた。
「洋介って西田洋介?知ってるよ、小さい頃は良く遊んでた。流次、知ってるの?」
俺は「うん、同じ学校。今回、ケンカに連れて行かなかったからブーブー言われた(笑)」
「洋介が清彦と友達って言ってたからさ、奇妙な縁だなぁと思って。」
そしてコンビニに着いた。
清彦は戸惑いながら話始めた。
「実はさ、笹山って坂八で1番強くて威張ってたんだよ。小五くらいからずっといじめられててさ。」俺は驚きながら聞き返した。
「えっ?仲間じゃないの?いじめられてたの?」清彦は小さく頷いた。
「ケンカ強くて大きいから、みんなビビってて。俺もだけど…でもこの前.流次に負けてからみんなの見方が変わって来たのはあるよ」
「うん、で俺にどうしろって?」
清彦は「俺、毎月カツアゲされててさ、来週までにお金を渡さないと、またいじめられるんだ」
俺はさらに驚いて「えっ?お金?仲間じゃないの?友達じゃないの?どういう事?」
「簡単に言ったら舎弟かな。坂八はそんな感じ」と清彦は小声で言った。
「じゃあ、俺が笹山に言って、それをやめさせれば良いの?」清彦は頷いた。
「わかったよ、ちょっと作戦考えるからさ。
清彦を疑う訳じゃ無いけど、その話が本当かどうかも確かめたいし。なんだかんだ言い訳して1週間くらいお金渡すのを延ばして。その間に考えるから。」
そう言うと清彦は「久しぶりに会ったのにゴメンね。笹山が負けると思ってなかったし、こんな話を出来る相手も居なかったから…」
「作戦決まったら、また清彦の家に行くよ。大丈夫だから。んじゃ帰るね。」
清彦とコンビニで別れた。
家に向かい歩いてると母親が信号で待っていた。「何かあったの?大丈夫?」と。
「あぁ何にも無い大丈夫だよ。もう帰るから」
すると母親は「夏休みの間に引っ越す事になったからね。」
「えっ?‼︎そんな大事な話を今?転校する感じ?」と聞いたら先生との話し合いで決まると言われた。先ずは清彦の件をどうするかで頭がいっぱいだった。