episode 8 西田洋介
6年生になったある日、洋介が近づいてきた。
「流次、学校終わったら会わせたい奴が居るから付き合ってよ」
あまりにも唐突だった。
俺は「誰?と尋ねた。
洋介は「会えばわかるよ、楽しい奴だから」
俺は特に予定も無かったから
「つまんなぇ事には巻き込むなよ」と
念を押し、取り敢えずは洋介に付き合う事にした。
するとプラモデルを浮かばせて遊んでいたじゃぶじゃぶ池がある公園の前にある、古タイヤの遊具しかない通称「タイヤ公園」で待ち合わせだと。
俺がタイヤ公園に着いたら洋介は既にいた。
「どいつだよ?」と俺
洋介は「まだ来てないっぽいよ」
「じゃあ帰るわ」と告げると
「すぐ来ると思うからちょっと待って」と。
しばらく待つと遠くからデニムにGジャンの背の低い奴が歩いてきた。
洋介が「来た来た!ガクだよ」と。
しかも小学生のクセにサングラスを掛けて登場したのだ。俺は思わず笑った。
「で、何なの?」と洋介に問いただすと
「ガクはスッゲー面白い奴なんだよ、絶対に流次と仲良くなるから、しかも兄貴が同い年だし」
「そうかね?んで兄貴繋がりで知り合った訳なんだ。ふーん」
サングラスを外してガクが俺に近寄ってきた。
「俺、持田学ってんだ、隣の小学校だけど楽しい奴がいなくてさ、コレから3人でツルんでこうよ」
ハッキリ言ってなんだこのトッボイチビは?と言うのがガクと会った第一印象だった。
ガクの兄貴は洋介の兄貴と俺の姉ちゃんとタメらしく、中学でツッパらかってるらしい。
まぁ、どんな奴かはこの先分かるだろうと
次の日から3人で遊ぶようになった。
ガクは兄貴からの影響をかなり受けていて、いわゆる「ツッパリ」を目指していたように感じた。
俺は楽しければいいと思いそんな事は微塵にも考えていなかった。
ガクの影響を少しずつ受けて居たのは間違いない。遊び方が変わっていった。
兎に角、ケンカだった。
弱い奴とケンカしても意味が無いから地元を少しでも離れた所で中学生相手にケンカを売る日々が続いた。
風の噂で学校中に知れ渡り、俺と洋介は自然と同級生から敬遠されるようになっていった。
そんな時に以前書いた俺の人生の最大のキーマンとなった「大野英二」が俺に話し掛けてきた。
「流次、俺、塾に通っててさ、そこで知り合った坂八小学校の奴が流次と勝負したいって言ってるんだけど。」
「はぁ?何で?勝負?どう言う事?」
英二は「ウチの小学校で誰がケンカ強いか聞かれてさ、流次って答えたらタイマンしたいって言ってきたんだよね」
「ふーん、で、ソイツとケンカしても英二は塾に行けるん?大丈夫なん?」と聞いた。
「多分、流次を連れて行かない方がめんどくさくなると思うんだよね」と英二。
「そっか、なら良いよ。いつ会うか決めといて,。
んで、悪いけどソイツの顔知らないから英二が連れてってくれよ。スグに帰っていいから。」
「じゃあ日にち決めたら、また教えるね」と英二。
「英二が塾に通うのと、ソイツが俺と勝負するのは別モンってちゃんと言っといてね」
そして勝負の日が決まった。
けど、ガクも洋介も連れて行かなかった。
ハッキリ言って足手纏いだったから。
この日から俺の人生は、日常はガラリと変わっていった。