episode 6 西田洋介
そうして毎週日曜日に少年野球チームでの練習で、また洋介と会うようになった。
グランドを借りるまでも無く、近くの空き地が練習場だった。
練習しても洋介は一向に上手くならず、チームも勝てない弱小チームだった。
1人抜け、2人抜け。
終いには女子を入れる様になってしまった。
この少年野球チームの監督は20代の自営の町工場の青年だった。
野球経験が豊富だったか分からないが監督1人、コーチ0人。
メンバーも9人ギリギリだったので自然と全員レギュラーだった。
またまた事件が起きた。
練習予定だったのが監督の都合で休みになった。
暇をもて遊ぶ俺たち。
すると洋介が「ハッピーロードのヨーク堂に行こう」と言い出した。
自転車で30分はかかったと思うが
当時の移動手段は全て自転車。
プラモデルも見たかったので、気軽に応じた。
そして店内で別れ、俺はプラモデルコーナーを見ていて、次はリモコンの戦車を買おうかと考えながら見ていた。
お腹が空いてきたので、洋介を探しあて
「クレープ食って帰ろうぜ」と洋介を連れて
ヨーク堂を出た。
その時だった。
後ろの方で大声を上げる大人がいた。
「そこのお前!ちょっと待て!」
と言いながら洋介の腕を掴んでいた。
俺は事態を飲み込めず、呆気に取られていると
「アイツもやりました!」
と洋介が俺を指差して叫んでいた。
更に呆気に取られる俺。
俺は容赦なく洋介をぶっ飛ばした。
「ふざけんな、バカ!勝手に万引きしといて俺を巻き込むな!」
「もうお前とは付き合い切れねぇよ!」と。
されど大人の見方は違っており、俺も連れていかれた。
事務所で身体検査を受けたが、俺は何も持っていない。
洋介は泣きながら謝っている。
そこで俺はまた洋介をぶっ飛ばした。
「泣いて謝るんなら最初からするんじゃねぇよ!」と。
慌てて止めに入る店員さんたち。
俺は店員さんに「警察を呼んでください」と
頼んだ。
しかし店員さんは洋介の泣きの演技に騙されたのか誓約書と出入り禁止という措置で俺たちを帰してくれた。
「マジ、うんざりだわ」と言い放ち
家までの道のりで洋介と言葉を交わす事は無かった。
本当に懲りない奴は、まだまだ懲りない。