live or die 5
手術後も順調に回復していき退院も目処が立って来た。
結果的に丸40日の入院で夏休みは病院で過ごした事になる。
しかしリハビリには最低2ヶ月は掛かると。
若かったせいか回復は順調だった。
2学期が始まりギプスを装着しての通学だった。
先輩たちはギプスを面白がり、骨に開けた穴に固定された太い針金を見つけると俺を押さえつけた。
そして、他の先輩がおもむろにライターを取り出してバラして、着火点を針金に押し付けてカチカチっと電流を当ててきた。
痛くは無かったが痛がるフリをした。
弱いくせに少し早く産まれただけで威張り腐る嫌いな奴だったから、弱みは見せなかった。
1人では何も出来ない寂しい奴だと理解していたから。
左手が回復したら真っ先にケツまくってやろうと。
もちろん誰もいないところで。
リハビリを続けて、ようやくギプスを外してのリハビリに切り替わる時がきた。
その時もベビーサンダーでギプスを切断して外した。
自分の手とは思えないくらいに筋肉が落ちて、骨と皮だけになっていた。
そして固定用の針金を外す時にぺンチを片手にもってニヤけながら医者は言った。
「これから針金抜くけど、自分でやってみるか?」
「ん?俺が?」
「お前以外に誰がいるんだよ」と。
軽く頷き、医者からペンチを受け取り針金を挟んだ。
「早く抜けよ」とニヤける医者。
躊躇したが、こんな経験も二度とないなと思い針金をペンチで引っ張った。
思いの外、スッと抜けて驚いたのを覚えてる。
「指を動かしてみろ、んで手首まがるか?」と。
言われた通りに指を動かして手首を曲げてみた。
指は動いたが手首が右手の半分も曲がらない。
少し焦った。
「しばらくはリハビリさぼるなよ。手首曲がらなくなるぞ」そう言って診察は終わった。
よくよく考えたら、自分の手術を見たり、骨を見たり、針金を抜いたりと普通に過ごしてたら出来ない経験をしたと思った。
ファンキーな外科医だったと思う。
名前は覚えてないが。
走馬灯を見た時点で死を覚悟したのは事実。
何故なら昔からよく聞く話だったから。
しかし、俺は死ななかった。
救われたのか生かされたのか。
2度目の死は違う形だが遠くない未来に訪れた。